創業者から代替わりする企業において、組織開発の参考をお届けします。
ありたい姿の探求
創業者(カリスマ)から一族2代目に交代したときに、人事としてどんな事を取り組みますか?
また、先代から使えていた幹部を含めた社員へはどのように対応していくのが望ましいか?
あなたが組織をまとめていくかじ取りを裏側から支えながら進めていく事を行うときに、何から始めるでしょうか?
私、自身も先代から採用頂き現在のポジションになっています。今までのカリスマ社長から2代目に変わる事に対しての自分自身の感情的な折り合いもつけながら、今後、会社を持続的かつ成長させていく事に重点を置くことが最重要課題と決めました。
まずは、2代目の考えをしっかりと確認する事からスタートしました。
2代目としての覚悟があって世襲していますので、この人を真の社長にするためには何をすることが望ましいかを考えました。
主に確認した点は以下の内容です。
①どのような世界観をもっているのか?
②社員に対してどのように思っているのか?扱おうとしているのか?
③年上の幹部社員についてどのように思っているのか?扱おうとしているのか?
④実現するための時間軸、資源。
⑤会社の文化や組織風土をどのような姿になることを望んでいるか?
何故、上記の内容を確認したかというと、会社を船に例えると社長は「船長」です。今後の進みたい方向をしっかりと把握することが、人事が打ち出す施策と繋がっていくと考えたからです。
①はまず、現在の社会全体を含めて、どの様な世界観をもっているか?ここを確認することで本人がどこに価値観を置いているか?を把握することが出来ました。
そのうえで、現在の会社で成し得たいこと、それに伴うハードルや時間軸の確認を行いました。
最初は任期は5年でそれまでに実行するというのが本人の話でしたが、その後10年を一区切りとしました。(実際に社長になって少したって思ったより時間がかかると判断されました)
②社員に対してどのように思っているのか?どのように扱おうとしてるか?確認する必要性は、
今後の社員の評価が変わる可能性がある、それを見据えて、人事制度や企業風土を変えるための取り組みが必要だと感じたからです。
やりがいのある会社にしたいという事で「自立した社員がお互いに共同して、さらに高い成果を求めあえる」会社を目指すことにしました。
③周囲の取締役や幹部社員に対してどのような思っているのか?今後どのような取り扱いをしようと思っているのか?については、かなりセンシティブな話です。一度の会話で聞き出すことは難しいとは思いますが、繰り返しヒアリングや各取締役や幹部と話している姿から、誰と価値観が近い、遠い。何は協力してもらえるが、一方で相手が譲らないものなどを確認するため、周囲の取締役や幹部社員にもヒアリングを実施して社長に対してどのように思っているのか?協力体制はあるのか?を確認しました。
④社長が考えるビジョンを実現するための時間軸や資源について確認をしました。これは、目標に置き換えたときに人事として人や組織が変わるまでには時間がかかるため、いつのタイミングで人事施策を打つのが最良化を考えるためです。また、施策が先行しても「人の心、体」がついてこれずに、退職をする場合もあります。その場合にキーマンが抜けても事業が回ることができるか?人的な面から把握しておく必要がありました。
⑤会社の文化や組織風土をどのような姿になることを望んでいるか?
私は、会社が発信するもの、会社視点を文化としていますが、世の中へ何をもって貢献するか?その為にどのような会社にしたい、付加価値は何とするために、「組織」「人」はどうありたいのか?を明文化していくことで、社員のマインドの循環を行い、行動変容につなげる必要があると考えたからです。
これらをヒアリングしながら、感じたことは「内向き」なイメージでした。社会をどのように変えていくために変革を起こすというよりも、社員から評価されたいと思っている。大きな組織でのマネジメント経験が無いことや、一族でのジャンプ昇進。本人からすると、周囲の納得感を得て周りと仕事をしていきたいという願望がありました。私自身は顧客中心で組織を組み立てていく志向を持っていましたので、これを主張すると支える側が対立構造を生むため、何かの機会を探る形で意思表示ができればと考えていました。また、新任してから直ぐには改革に取り組めないと判断したのか、先代のしてきた事を継承をすることで、ソフトランディングを図っていました。(ここは、変えたかったけど、折り合いが付きませんでした。是非、世襲社長を支える皆さんは社員のマインドが変わることの機会に活用してください)社員からするとある意味社長交代は戦々恐々としていたところ、何も変わらないことに安心して、何も改善が起きませんでした。また、各事業部長や機能長に発信をさせることで、自らがあまり発信しなかったため、本人の「人となり」を社員に知っていもらう機会を損失していましました。世代交代が行われ、40代の若い社長が就任したにも関わらず、新たな会社づくりはコケるところからスタートしたのです。つづく・・・
参考_2代目社長のパーソナリティ
・大学卒業して新卒として就職
・営業時代はトップセールスとして活躍、その後親族の為、異例の出世を遂げて入社して10年で「常務取締役」となる。新卒時代にお世話になった先輩社員が多数いる。関係性は良好だが、当時の先輩後輩の関係を現在も引きずっている。
・我が強いが、先輩へは気を使い本音で話せない。
・本人の本気が表現しても周りにあまり伝わらない事が多く、何を考えているかわからないと言われる
・承認欲求は高く、話の中で自分の手柄や会話に話を持っていく。
周囲の状況
・副社長として先代を支えてきた実力者(60代)
・取締役は新卒の生え抜きだが、社長より入社は先の先輩(新人時代にお世話になっている)
・本部長・部長も新卒が中心で社長と直接仕事をしたことがあるメンバーがほぼいない。
・社長が独自に採用した中途社員がおり、執行役員や本部長を務めているが一枚岩ではない。
まとめ
まずは、社長に夢を語ってもらい、社長自身の人となりを再確認していきましょう。以外にも、いつもみている存在であったとしても、立場が変わることで見えてきたものが変わってきているかもしれません。一度で終わらず、人事としては定期的にヒアリングの機会を持っていきましょう。
また、周囲の協力体制がどのくらいあるのか?周辺幹部や管理職、現場社員などへもヒアリングを行い、社長がどの様な存在であるかを確認しておくことで、社長がやりたいことを実現するための進め方が見えてきます。