創業者から二代目に!人事が取り組む事_その2

創業者から代替わりする企業において、組織開発の参考をお届けします。

前回のまとめ

カリスマ創業者から一族の2代目に交代したときの取り組みとして、
①2代目社長に夢を語ってもらう。(人となりを再確認)
②定期的に時間を取ってもらい話を聞く(社長になって価値観や見えてきたものがある為)
③周囲の協力体制の確認(古参の幹部や管理職)
④現場社員へのヒアリング(どの様に新社長を見ているか?何を期待しているか?)
2代目社長がやりたいことと幹部・管理職・現場社員とのGAPを把握することで、人事としての取り組むことが見えてきます。

周囲の状況・社長のパーソナリティ

 副社長として先代を支えてきた実力者(60代)や2代目社長より先に入社した新卒の取締役。社長自身はトップセールスとして実力はあったが、一緒に仕事をしてきた仲間がほぼいない。2代目社長が独自に採用した執行役員や本部長はいるが一枚岩ではない。社長自身の我は強いが、先輩社員へは気を使って本音で話せない。本人は本気で話しているが、周囲からは何を考えているかわからないと思われている。

理想と現実のGAP

 社長へヒアリングして行った結果、社員想いで、世の中の社会課題に対しても解決していきたいという想いに溢れていました。それを実現する為に、現状の問題と課題を洗い出す所からスタートしました。当時、事業部制で各本部長及び担当取締役が事業をリードしていることで、事業部に所属する社員は各事業本部長(担当取締役)のいう事に対して仕事を遂行していく状況です。また、全社の「経営理念、バリュー等」に対しての発信は「副社長」が社員に対して思いを伝えるという状況でした。社長自身が自らの考えを発信する機会は少なく、社長自身も各事業本部長や副社長が発信することに対して疑問を抱いていませんでした。私はこの状況に一番のGAPがあると感じて、まず、社長自身に発信する機会を集中していくように心がけました。新しく経営の代表者が変わった状況で社員も多少構えている状態だったため、社長がこれから何をしていきたいか、どのような世界観を築いていきたいかの発信する機会を増やしていこうと思っていました。しかし、結果は社長が今までのスタイルを継承することを判断されて為、事業本部長は事業、副社長が「会社全体」の事を発信するという流れは変える事が出来ませんでした。スタートで躓いてしまったと思いましたが、人事として会社を支えていく事をベースに考え、次の行動を起こしました。

副社長と面談

 社長がこれから行いたい事と副社長の今までの発信内容についても大きくいくと変わりはないと私は思っていました。ただ、発信する人が「誰か」という点に関しては社員に対して与える影響は大きく違いと考え、社長が全社に対して発信していく流れに代えれないかと考えていました。そこで私がとった行動は副社長との面談でした。ヒアリングをすると副社長自身も「いつかは社長になりたかったという願望はあったとのことで、ただ、同族では無いため、社長に成れなかった心残りのようなものを感じました。私自身、先代の社長から務めていましたので、現在の副社長の実力は十二分に感じていました(会社の伸ばした功労者としてリスペクトでいる人物です)しかし、2代目社長を中心に会社を進めていく立場から私は副社長に正直に「今後の全社発信について社長に変わってほしい」と伝えました。副社長が育てていただいた会社の思いも含めて、今後の社長に託して欲しいという内容です。そのためには現副社長から2代目社長へ発信力を変えていく事で、経営の中心にいる存在を内外に示したいという内容です。副社長も意味を察して頂いて、「全社発信について、社長へ交代すること」を了承していただきました。

社史の作成

 人は「感情」の生き物という言葉を皆さんも聞かれた事があると思います。全社に対しての発信を社長に変わってもらう代りに、副社長が次に仕事のエネルギーをどこに持って頂くか?という事を思案した結果。「社史」の作成を提案しました。感情も日記やノートなどに書き留めると冷静になったり、気持ちが落ち着くなど話を聞かれた事があると思います。「副社長」にとって「先代社長」との仕事の思い出は正に「青春」だったと思います。気持ちを整理する意味で今までの「功績」を一つの形にまとめていくという事で「気持ちの整理」「エネルギーのもって行き場」を作りました。この取り組みがうまく行って、全社の発信は副社長から2代目社長へと変わり、副社長自身の感情の整理も形に残すことができました。社長と副社長のやりとりはその後も色々あったと社長自身から後で聞きましたが、社員にとってはスムーズな役割交代に映っていたと感じています。

発信者の統一

 副社長以外にも事業本部長(取締役)など、様々な方が発信者として存在していました。経営者が変わったばかりで、今まで通りの方々が発信していくことで、社長自身の存在感が際立たないと感じました。また従業員へもヒアリングして行く中で、社長自身が何を考えているのか、わからない。などの話も出てきていたため、週に1回の全社発信を副社長から「社長」へ変更。社内の発信文章も「重要なお知らせ」を「社長からの通達」へ変更。定期的に開催される会議の中でも社長に常に発信してもらいました。また、外部からインタビューや取材、登壇なども今までは社員や幹部など様々な人が対応していましたが、そちらも社長に出ていただくことで、露出を増やしていき、社長自身がどの様な人物で何を考えている。先々どのような事を見据えて、今何がしたいのか?何に価値を感じているのか?などを発信してもらいました。これにより、ダイレクトに社内外に社長自身の考えが伝わるようになりました。外部からの登壇依頼や取材も社長に対して集まるように変わってきました。(社長もスピーチ力が上がり、常に話すことで一貫性のある話をしていただくことが出来ました。)従業員に対しての理念研修も社長に行って頂くことで内定者や新入社員に対しても社長自身の存在をイメージしてもらい、共感者づくりに努めました。

ブランドメッセージ。コンピテンシーの変更

 企業イメージを新しく刷新していく中で、経営理念は変更しませんでしたが、ブランドメッセージやコンピテンシーを変えることで、社外に対しての顧客や関係企業に対してどのような価値を届けるのか?従業員に対して「どんな事を評価したいのか?」を伝える機会としていきました。

まとめ

 社長自身に語って貰うために、何故、社長が話す必要があるのか?を「社長と関係者」に伝えていく事で理解をいてもらい、一つの方向に向かっていく事を心掛けました。今まで発信していた方々からすると出番が無くなることで、面白くないという印象も持たれました。そこに対しては「期待役割」という言語で「経営幹部陣」のとりまとめにかかりました。つづく・・・

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